次の日の朝。
相変わらず暴風だ。僕は長期戦を覚悟した。幸い食料、水、燃料はしっかりある。
が、意外にも青空が広がり朝日が昇っている。
試しに外を散歩する。
みぞれ雪だったから、雪のように見えて表面はカチカチに凍っている。
それに真正面から風を受けると、息が出来ないくらいに風が強い。
本当に吹き飛ばされそうになる。台風のリポートやってんじゃねーんだから。
まいったな・・・。どうしよう。とてもじゃないけど、自転車漕げねーぞ・・・・
呆然としていると一台の車が入ってきて僕の前で止まった。
「あなたこんな日に外で泊まったの?大丈夫?
私の上の店をチェックしてきたんだけど、すごい雪で、ゲートも閉まっているわよ。下山するなら乗せてくわ」
なんとなくそんな予感はしていた。でも今は閉まっていてもやがて開くだろう。
だけど、次の一言が決め手になった
「それに、違う別のストームが来てるのよ」
・・・。今回のストーム。僕は運が良かったんだと思う。吹雪いてきたのは、テント設営後だったし、吹きさらしだけど、屋根もあった。
だけど、吹雪がもっと早く体が濡れていたら。うまくテントが立たない場所だったら。誰にも見つけてもらえなかったら。
本当に危険な状況だったかもしれないのだ。こんな世界的観光地で命張っている場合ではない。
でもでも、とても楽しみにしていた場所だ。本当に本当に苦渋の決断だった。
おばちゃんに乗せてもらい、麓の町まで下りると、嘘のように風が弱かった。一応そこでもストームが来るか確認したが、やはり「来る」と。
午前中は風が弱く、何度も何度も立ち止まり振り返り、引き返そうか本当に迷った。
だけど、午後もんのすっごい風が下界でも吹いてきた。それに道路もこの有様。
やっぱり引き返して正解だ。フラットでも風に煽られ雪道では本当に怖い。たぶんキャニオンとっこんでたら死ぬ。
突き刺すような風がどんどん体力を奪う。
まわりは雪。それしかない。モーテルはもちろん家すらない。時間も夕方迫る。テントを張るには風が強すぎる。状況はかんばしくない。
と、また一台の車が止まった。
「どこへ行くんだ?フラッグスタッフ?
乗っていきなさい。こんな日に走るもんじゃない。」
今度は即答で「あざーっす」
ちなみに僕の中のルールとして、危険地帯と緊急時を除いて、自分からヒッチ・バス・電車の利用はしない。
でも、止まってくれたら話は別。
20マイルほどワープし、モーテルにありつけた。
・・・僕はグランドキャニオンを諦めた。麓の町でスタッグする選択肢もあったし、本当にストームがあるとも限らなかった。だけど午後は下界も台風並みになっていたので、この判断は恐らく正しい。
でも
「行けたかもしれない」たぶんしばらく付きまとう。
はぁ・・・残念。一晩だけ凹みます。
いつか絶対行ってやるからな~~~!!