一年前の今日の事を僕はよく覚えている。
カラッと晴れたまだ日が高いアラスカの白夜の夕方。それが現実のことなのかさえも解らないフワフワした状態で僕は無機質に自転車を組んでいた。
どこからどう見ても新品の自転車。装備。初心者の自分
状況を理解しようと周りを見渡すが、何一つ情報として頭に入ってこない。
これが夢への一歩とするならば、まさに夢の中を進むようなスタートだった。
色々な想いが頭の中で交錯した。不安を押し殺す為に必死にテンションを上げた。
この時僕は本当に白夜が夜中も太陽が沈まないと信じられなかった。
しばらくそんな感じで旅を続けていた。
序盤の僕の拠り所は往復で買った帰りの航空券だった。
「出来そうになけれが、これで帰ればいい」
始めはリアルにそう思った。
一ヵ月後の日本行きの航空券。正確にはそれよりちょっと前。アンカレッジへ戻るか、先へ進むかの分かれ道。
めちゃめちゃ悩むと思っていた。
ただ、僕は当然のように先へ進む道へハンドルを切った。
笑えてきた。
可笑しくてたまらなかった。
ずっと持っていた保険がずっと足かせになっていたのだ。帰りのチケットを破り捨てた時それまで体感した事のない自由という感覚が襲ってきた。
これで後ろをチラチラ振り返ることも無く、前だけを見据える事が出来る。
進むしかない。という感覚が実に爽快だった。
あれからもう一年たったのだ。
色んな傷を負った自転車。破れたカバン。驚くくらい黒い自分
当然だアラスカから走ってきたのだ。自分が一番信じられない
あの頃よりちっとは成長してんのか?俺?
あっという間だったが、思い出せば思い出すほど、濃い時間が溢れてくる。
北米はその大自然に圧倒され、中米は建築物、遺跡、生活感に心を奪われた。
夢の中にいるのような感覚でスタートした現実。
実際は夢よりも全然面白い現実が待っていた
でっかい本屋のでっかい世界地図の前に立ってみる。
一日の進む距離わずか数ミリ。
それがあの一番上から、真ん中の一番細くなってるところまで下りてきたのだ。
途方も無く小さい一歩の繰り返し。だけど確実に前へ進んでいる。
情報化や交通網の発達で地球が狭くなったと言われる時代
すでに地球上の空白は既に無く、冒険の時代は終わったと言われる時代
冗談じゃない。
世界は僕が小さい頃ワクワクしながら憧れていた、あの時のままだ。
世界は昔から色あせることなく、ずっとここにある
でっかく。力強く。おもしれぇ
やっぱすげぇよ。地球
やっぱ俺。この星全部見たい。
日本で応援してくれる人と、旅先で出会った人。拙い文章に付き合ってくれているブログの読者の方々。すべての人に感謝します。
ありがとう。それでは2年目突入です。
迎えるは、
南米大陸。
よっしゃ~。いくぞ~~!!
2010年 7月 9日 パナマにて 昼間 岳
走行距離 1万4000キロ
走行国 9カ国
アラスカ ・ カナダ ・ アメリカ再入国 ・ メキシコ ・ グアテマラ ・ エルサルバドル
ホンジュラス ・ ニカラグア ・ コスタリカ ・ パナマ