夜、雨がテントを叩く音で眼が覚めた。
その音が柔らかいものへと変わり、徐々に小さくなっていった。
よしっ、止んだ。この時間に止めば明日も問題なく走れるな。
朝はいつも暗いうちからヘッドライトをつけて準備する。
すると驚いた。
黒い影がテントにへばりついて居たからだ。
うぉ。なんじゃこりゃ。
と、テントをバッシッと叩くと、バサバサバサとその物体はテントから剥がれ落ちた。
・・・・。
まじ・・・?
テントを開けてみると、やっぱし
どこ・・・?ここ?笑
昨日こんなんだったのに。
音がしなくなったからてっきり止んだのかと思ってたら、かまくら状になって音を吸収していただけだった。
今年のヨーロッパは秋が長引いてるとの事だったけど、一気に来ちまったか。
つうか、アルプス越えた所で大雪って。笑
やっぱり人間って経験って大事だと思う。
こんな感じに雪に埋もれても、あの時に比べればまだマシだなと思えると、こんな状況も大した事じゃなく感じられる。
よっしゃ。行くか。
さすが、ヨーロッパ。朝も早くから除雪車がせっせと動いておりました。
ところが、ものの1分でパンクに気づく。
めんどくせぇとは思ったけど、運良く納屋の軒先があったのでそこで修理と相成った。
正直パンク修理なんざぁちゃりんこ店時代にやりまくったし、この旅でも数え切れないくらいしている。
サクっと仕上げちまおう。
と思い、いつもの様にタイヤレバーを差し込みグッと上げた。
バキッ!!
物凄く簡単にタイヤレバーが折れてしまった。
気温はマイナス5度。
寒さと劣化かなと思い、さして気にもせず2本目を突っ込んだ。
バキッ!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!????????????????
ここで、ようやく簡単なパンク修理から一転、窮地に追い込まれていた事に気づいた。
いま思えば、1本目が折れた時点でもっと慎重になるべきだった。
タイヤを外せないことには、当然パンク修理もチューブ交換も出来ない。
降りしきる雪の中一瞬立ちつくした
それからは、もう試行錯誤の繰り返し。
折れたレバーを強引に使ったり、工具を駆使して強引に持ち上げようとしたり・・・
ただ不思議なもんで、いざ窮地に立たされると頭はクリーンになり冷静に状況を分析出来た。
3本目ラストのタイヤレバー。これだけは最後の希望。折るわけには絶対いかない。
バキッ!!!
ふむ。まいったぞ。こりゃ
こりゃマジで街までヒッチすることを考えないとまずいなぁ
散々格闘した後、あるひとつの禁じ手が頭に浮かんだ。
そうだ。切っちまおう!!
我ながら無茶苦茶。ヒッチで戻るよりまだ使えるタイヤを切る選択を選んだ。
今までいらないと言われつつ、持ち運んできたワイヤーカッター。
今まで多分3回くらいしか使ってないこいつ。
役立ってもらおうじゃないの
折れたレバーで思いっきしビードを持ち上げて、ワイヤーカッターを強引にねじ込んで、
バチッと切った。
そこからは、バチバチと切っていきついにタイヤを外すことに成功した。
後は、南米で女性チャリダーの由紀さんに頂いた最強マラソンタイヤを装着。
本当に由紀さん大感謝。
なんとかこれで自走可能になった。後輪もスローパンクしてるようだけど、空気を入れてとりあえず走りぬけよう
そこからは、オーストリアの急坂のアップダウンを雪が降りしきる中、ぜーぜーいいながら走行
休憩。
止んだように見えるけど、ジャンジャン降ってます
走りながら雪が当たるから、フロントバックもこの通り
んでもってアルプス山脈の麓の町マウセンまでやってきた。
ちなみにここの標高が640m。峠が1360m
ここでこの積雪だから、峠はもっとだろう。
本当はこのままこの111号線を直進して、オーストリアからスロベニアへ抜けて、ジュリアン・アルプスを走る予定だったけど、この雪がこのまま降り続いたら下手すりゃアルプスを越えられず、オーストリアに足止めされる心配もあった。
それに凍結していない新雪のうちの今ならならなんとか、歩いてでも峠を越えられる見込みはあった。
ジュリアン・アルプスは残念だけど、このままイタリアへ抜けよう。
この峠さえ越せば、後はアドリア海までずっと下り坂が続いているからとりあえず雪の心配はなくなる。
そう思い漕ぎ出してみたものの、やはりこの峠越えはしんどかった。
斜度がきついと評判のオーストリア。除雪はしてあるけどところどころとられる雪にポキッと心が折られ、きつい坂道は歩いて上っていった。
喘ぎ止まり、止まると一瞬にして冷えるからまた走り出す。
峠はこれまたバカみたいな斜度のトンネルになっており、ようやくようやくアルプスを越えた。
雪景色だったけどイタリア側をみて、助かった・・・と心底思った
イタリア再入国。
せめてイタリアの文字だけでも見えるようにしようと払ったけど、雪がこびりついて取れなかった。
絶対やっていないと思っていた峠のレストランがやってた。
ありがてぇ
湿っていた防寒具を乾かして、ダウンヒル
思った通り、アルプスの南側は雪が少ない。
谷に下りると一気に秋に戻ったようだった。気温2度が物凄く暖かく感じる
今日はここで野宿。
雪がない野宿は幸せだなぁ。
834日目 Paluzza 70キロ 標高 1550m→640→1360→655m
@イタリア