話は一杯の雪解け水から。
ここトルコでは湧水がいたることろに出ているのだけど、ここのはまさに雪解け水がそのまま飲めるみたいなところだった。
そしてこの2200mの峠。
下ってみて驚いたのだけど、この峠から黒海にいたるまでずっと川沿いをのんびり下って行く最高の峠だった。
思い出してみても、峠からずっと川沿いを通って海まで注ぐ道ってのはあまりなかった気がする。
峠から海まで約90キロ。
雪解け水がちょろちょろと様々なところから流れ出て、やがて一本の小さな小川になる。
森林限界で木はなく、草が生えるのみの峠付近
少し下りると、ふさふさの毛の羊が放牧されている。
緑が鮮やかになり、やがて背の低い木がまばらに生え始める
木から林へ。そして森へ。
針葉樹林の森の中で雲の中に入った。ずっと乾いた大地を走っていたので、思えばこのしっとりとした感じは久しぶりだ。
暗く重苦しい色の針葉樹林を抜けると、ぽつぽつと鮮やかな緑をまとった広葉樹林が現れる
それが、だんだんと広がっていき、本当に綺麗な風景を作り出す。
やがてしなびた温泉街の様な町が現れ、交通量も増える
太陽と影の陰影がくっきりと刻まれ、
最初跨げるくらいだった川幅も、轟々と音を立てて流れていた上流から、すでに悠々と幅の広い谷をのんびりとなぞっている。
そして90キロの長旅を終え、あの一杯の雪解け水は、黒海へと注いでいった。